Jul 29 2009
∞
“ 私はそこではじめて醒めた質問を彼に浴びせた。
あなたの記憶ではこれまでこの寺から逃げた僧は何人くらいいますか。
彼は三十六人だと言った。
それぞれの名前と年齢を聞いて驚いた。
ダワの例もあり、私は逃げるのは小僧とばかり思っていたのだ。しかし夜逃げ僧は四十代が圧倒的に多いのである。私はそれを興味深いことだと思った。俗世界においても同じことが言えるからだ。人が老いを意識しはじめる四十代は迷いの季節であり、所在を他に転じる最後の機会であるとも言える。彼らが未だ見ぬ俗世界への回帰を、これが最後のチャンスと見て寺を逃げたとすれば、けだし”人間的”としか言いようがないし、哀れでもあり、また愛しささえ感じもする。
あなたの記憶ではこれまでこの寺から逃げた僧は何人くらいいますか。
彼は三十六人だと言った。
それぞれの名前と年齢を聞いて驚いた。
ダワの例もあり、私は逃げるのは小僧とばかり思っていたのだ。しかし夜逃げ僧は四十代が圧倒的に多いのである。私はそれを興味深いことだと思った。俗世界においても同じことが言えるからだ。人が老いを意識しはじめる四十代は迷いの季節であり、所在を他に転じる最後の機会であるとも言える。彼らが未だ見ぬ俗世界への回帰を、これが最後のチャンスと見て寺を逃げたとすれば、けだし”人間的”としか言いようがないし、哀れでもあり、また愛しささえ感じもする。